仙巌園は鹿児島県鹿児島市吉野町に位置する島津家19代当主島津光久が万治元年1658年に築いた別邸で、錦江湾と桜島を池に見立てる借景庭園として日本を代表する大名庭園である。面積は約5ヘクタールの広大な敷地に江戸初期の御殿と、明治期に迎賓館として洋風意匠を取り入れた異人館、刀剣や薩摩切子を展示する尚古集成館を併せ持ち、敷地全体が国名勝に指定され、園内に残る反射炉跡や溶鉱炉跡は2015年に明治日本の産業革命遺産として世界文化遺産に登録されている。この場所で1852年に藩主島津斉彬は日本初の西洋式反射炉築造に着手し、1857年には日本で初めてガス灯の実験を成功させ、大砲やガラスの製造など集成館事業と呼ばれる近代化政策の実証拠点となった。庭園は桜島を築山、錦江湾を池に見立てた雄大な借景式庭園で、錦江湾に突き出す磯の地形を活かし、石灯籠と松の配置が計算されている。桜島を望む「曲水の庭」ではジャカランダやベゴニアの花々とともに庭石に刻まれた菊寿館のメダリオンなようなプレートの中に映る近景と桜島の階調が調え、島津家の家紋にちなんだ南天も意匠として含む。入館料は大人1,000円、御殿内部は1,500円の別料金で、ボランティアガイドによる案内が実施され、刀剣の研磨実演や薩摩焼の絵付け体験も行われる。麓には磯海水浴場と石蔵群があり、菓子店の両棒餅はB1グランプリ鹿児島での人気投票で58票を集め2位となる個人的な評価を受けた餅菓子で、観光客は中と外を囲む開放感のある庭景と産業遺産の重厚感を一日で体感でき、桜島フェリーで訪れる市内観光コースの定番となっている。